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一週間、その他の小さな旅

著者:管啓次郎

頁数:144頁
予価:2400円+税
ISBN:978-4-910108-12-4 C0092

挿画:惣田紗希

装丁:宗利淳一
2023年6月16日発売

月曜日

たくさん月が昇る

見上げる人の数だけ

にぎやかな夜空

鮭もきつねも

椎の木も昆布も

私たちはみんなでひとつの命

「福島民報」のために書かれた

「一週間」「犬と詩は」「こころ」をはじめ、

やさしい言葉がつむぐ

毎日の旅への誘い。

旅の詩集

【目次】

一週間
To the Open Ground
千年川
Water Schools
三島/長泉詩片
東京詩片
ブリキのカメラ
夜の道
外に出たフィルム
犬と詩は
犬の詩四つ
犬ときつね
猫の詩3つ
シャルル猫
ウォンバット
コヨーテとオサムシ
里芋、大根、大豆
木について
ウェゲナー
小さな牛たち

草原に行こうよ
こころ

あとがき

【「あとがき」より】

 新聞のために詩を書くのはいい経験だった。それも元旦のための詩を。どうせ書くなら「福島民報」の読者の誰にとっても、楽しく読めて、ちょっと気分が改まる、そんな詩が書けるなら。二〇一八年から五年間にわたってぼくは「福島県文学賞」詩部門の選者を務め、それに付随する仕事のひとつがこの新年のための作品なのだった。本書の冒頭の「一週間」、中ほどにある「犬と詩は」、巻末の「こころ」は、こうして生まれた。

 選考委員の仕事のいいところは、まったく思いがけない声と内容をもつ、詩人と名乗らない人々の作品に、次々に出会うことだ。なんども目をひらかれ、胸をつかれた。毎年くりかえし現れたのは震災の経験。深い哀悼に、それでも或るとき、明るい陽光がさしこむ。詩はいつも記憶と忘却のあいだを行き来するが、詩を作ることばの色合いもそれにつれて変わるようだ。そして時が介入する。「言」と「日」はつねに新しく出会いつづける。

 もともと東北はぼくには未知の土地だったが、震災後、なんども訪れることになった。いろいろな光景を見たが、口にできることばもなく、文字はかたちにならない。ほんとうに美しい土地が多い。ある春の日、石巻市の大川小学校跡地を訪ね、北上川を眺めた。頭の芯がしびれたような気分だった。この詩集に収めた詩の中では、その思い出が「千年川」につながっている。「Water Schools」は名取市の閖上小学校、大川小学校、そして奥多摩町の小河内小学校の印象から生まれた。いずれの小学校も、いまはない。

 旧・小河内小学校は、二〇二一年春に古川日出男を中心に制作した朗読劇『コロナ時代の銀河』の無観客上演の舞台。それをリアルタイムで撮影した映像作品(監督・河合宏樹)が公開されているので、よろしければYouTubeで「コロナ時代の銀河」を検索して、ぜひごらんください。最後の最後で、そこがどんな水辺の場所だったかがよくわかる。

 ここには主として『PARADISE TEMPLE』(Tombac、二〇二一年)以後に書いた雑多な詩を集めた。第九詩集。犬猫好きのみなさんには、とりわけ楽しんでいただけることを願っています。

 

 二〇二三年四月九日、狛江

​【著者略歴】

管啓次郎(すがけいじろう)

1958年生まれ。詩人、批評家。明治大学理工学部教授。詩集『Agend'Ars』『島の水、島の火』『海に降る雨』『時制論』『数と夕方』『狂狗集 Mad Dog Riprap』(いずれも左右社)、『犬探し/犬のパピルス』『PARADISE TEMPLE』(いずれもTombac)、英文詩集にTransit Blues(University of Canberra)がある。紀行文集『斜線の旅』(インスクリプト)により読売文学賞受賞(2011年)。エドゥアール・グリッサン『〈関係〉の詩学』『第四世紀』(いずれもインスクリプト)をはじめ、翻訳書多数。2021年、多和田葉子、レイ・マゴサキらによる管啓次郎論を集めた研究書Wild Lines and Poetic Travels(Doug Slaymaker ed., Lexington Books)が出版された。

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