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原視紀行
地相と浄土と女たち 

著者:石山修武

写真:中里和人

頁数:144頁
予価:3000円+税
ISBN:978-4-910108-09-4 C0020
装丁:宗利淳一
2023年1月中旬発売

鬼才建築家・石山修武が、日本の深い地相と歴史をたずねながら、知られざる文化や人々の暮らしに迫る!

文化的な遺産や自然の様々な痕跡と出会いながら新たな魅力を再発見するちょっと不思議な「原始旅行のガイドブック」。

旅先でとらえた中里和人の幻想的な写真を35点収録!

(うち25点フルカラー)

 

【目次】

はじめに 石山修武

第1章 三大日本奇景は大仰だが、もっと大きい景色について 石山修武・文/中里和人・写真
    漂流する、堆積する 野田尚稔

第2章 イタコ・石・夢の宮殿、そしてシュルレアリスムについて 石山修武・文/中里和人・写真
    海、あるいは時間 野田尚稔

第3章 今だからわかることは多いが、シャーマニズムの伊勢はどうか 石山修武・文/中里和人・写真
    石を抱いて山を登る 野田尚稔

【石山修武「はじめに」】

 三つの小さな旅の記録であるが、風景は皆大きい。

 一、フォッサマグナ、糸魚川、日本海沿岸の旅。

 二、奥州平泉、そしていわき市白水の浄土庭園の旅。

 三、伊勢松阪を巡る旅。

 一は列島における大地溝帯とシャーマニズム探訪を目的とした。民俗学者宮本常一が示唆するように列島文化の前近代は西日本と東北(東)日本は人々の会合の性格が異なるようだ。その異なり方が地形が作る風景と関連するのではないか。そして古代シャーマンが生み出されたのは、断層からの鉱物の装飾性に助けられたかの考えが生まれた。

 二は奥州平泉の列島最大級の浄土式庭園が藤原氏一族の女性たちの感性と構想力の産物であろうを、探ろうとした。日本列島文化の最美人工物の一つである宇治平等院鳳凰堂の建築も又、その庭園の池に写し出された姿が結晶であるが、その鏡面としての池の姿は、むしろ平泉の浄土式庭園大池が、より優美であると考えた。文化がむしろ中心らしきから遠い処に結晶するの可能性を考えた。

 三は列島文化の象徴でもあろう天皇の社である伊勢大社を、大社周縁から考えようと試みた。

 大社造りの建築様式には直接触れていない。むしろ大社を囲む森、川を巡るささいな人工物の風景を考える手段とした。

 

 以上の三つの旅は専門分野が異なる三名でした。建築畑、写真畑、美術畑の住人である。本は言説により成るが普通だが、それぞれはそれぞれに越境者の性格が在り、時に言説は写真術の力を借りねば、自ずからなる限界が在るも知るので、写真家の強いアニマの伝達力は欠かせず、むしろ言外を表現する力として共有する事とした。

 写真と言説の境界線をも、旅していただければ幸いだ。又、その事を意識して本として編集された。

 作者と編集者との境界線をも楽しまれたい。

 

 本の製作はコロナ禍の内でなした。更に続けるを強く望んではいるが、先は五里霧中である。

 はじめに、はあっても、あとがきが無いのはそれ故である。

 境界線が強く、時に障壁として現れるが国境である。

 この本の内の形式としても国境を越えねばならぬが努力したい。

 

 さて、第一章のフォッサマグナとシャーマンの誕生について述べる前に、いささかの前触れをどうしても置かねばならない。フォッサマグナの日本海側糸魚川エリアの古代座女奴奈川姫はシャーマンの一人である。シャーマンの存在が今(二〇二二年)にも続いていようが、わたくしの小論の骨子でもある。シャーマニズムは変型、変種を重ねて、今では諸々の芸術、しかも良質なそれに継承されている。そう考えるので、一章の冒頭に若干を加えた。

 

 旅は古きを訪ねるが極上である。

 先を視すぎたのが列島近代の、すでに過去であり歴史である。

 ピカピカ、ツルツルの新品だらけの都市には皆が辟易し始めていよう。

 新品だらけより、古びた中古品、古物が在った方が健全である。健全とは程々の長命を目指すことだ。けれども、人間は程々であって良いが、旅の行先は古ければ古い程に良いのである。

 行先にはモノがあるだろう。出来れば古代を超えて、原始にまで辿り着きたいが、これは実に困難な旅になってしまう。あまりの困難は剣呑である。

 それで本書はガイドブックたらんとした。案内しようとした場所は新日本列島三景であり、歴史も地質学、女性史、日本古代シャーマンまでの三点セットなので、そう読んで下されば良い。

​【著者】

石山修武(いしやまおさむ)

1944年生まれ。建築家。早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。早稲田大学理工学部名誉教授。1985年「伊豆の長八美術館」で第10回吉田五十八賞、1995年「リアス・アーク美術館」で日本建築学会賞、1996年「ヴェネチア・ビエンナーレ建築展」で金獅子賞ほか受賞。主な作品に「幻庵」、「世田谷村」、「ひろしまハウス」など。主な著書に『笑う住宅』(筑摩書房)、『住宅道楽』(講談社)、『生きのびるための建築』(NTT出版)ほか。中里和人との共著に『セルフビルドの世界』(筑摩書房)がある。

​【写真】

中里和人(なかざとかつひと)

1956年生まれ。写真家。法政大学文学部地理学科卒業。東京造形大学名誉教授。主な写真集に『小屋の肖像』(メディアファクトリー)、『キリコの街』(ワイズ出版)、『路地』(清流出版)、『東亰』(木土水)、『ULTRA』(日本カメラ社)、『Night in Earth』、『URASHIMA』(蒼穹舎)ほか。

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